昭和60年の初めごろから昭和62年の8月ごろまでに不動産部門に流入した資金は、全体で20兆円前後と推定される。一方、同期間の貿易黒字の累積額は32兆3772億円である。つまり貿易黒字により生じた余剰資金のうち、約64%近くか土地投機に向かったことになる。一般には、貿易黒字が異常に増大すると国内では金余りのためインフレが生じることになるが、我が国の場合はその間むしろ、消費者物価がわずかではあるがデフレ気味に推移した時期もあるくらいであり、同期間を通じても物価上昇は1%に満たない。国内に金がだぶついていても、それが一般の物価に反映されなかったということは、余剰資金がいずれか特定の分野に集中したからである。まさにそれが土地やビル、マンション建設の分野だったわけである。2年半の貿易黒字の約64%がまさに土地に、しかもその80〜90%が東京圏に集中的に流入したためである。結果的には、経済の法則がストックインフレ(不動産、株価など資産の価格か、一般的物価を上回って上昇する現象)という形で表れたことになる。しかも、次の点は厳密な意味で因果関係があるとは断言できないが、昭和56〜57年ごろの貿易黒字の水準、ほぼ2兆円前後が、昭和61年のピークで14兆4000億円へと7倍近くになったのに対し、東京都心の商業地や高級住宅地の地価がピーク時ではそれに近い倍率で上昇したのである。
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